2022年8月25日に専攻医向けレクチャーが開催されました。
2022年8月25日に、加藤 光樹先生(まどかファミリークリニック 院長)より、「不定愁訴(MUS)」をテーマにご講義いただきました。
そもそも、不定愁訴とは「適切な医学的な精査を経ても明確な診断がつかず、愁訴が持続し、ときにその内容が変化するもの」とされており、海外ではMUS :Medically Unexplained Symptoms(Persistent Somatic Symptomsとも)と呼ばれています。
ある研究では、プライマリ・ケアの場においてMUSは不定愁訴は45%ほど経験されるとされており、内訳としては疼痛が最も多く、時点で消化器症状などが多いとされているようです。そのように多く経験されるものの、患者さんとのコミュニケーション不足や曖昧な症状などの要素のために起きる誤診には注意が必要で、時間と共に典型的症状が揃うこともあり定期的な見直しが必要と学びました。
また、Treatment burdenとWell-beingについて意識することが重要と学びました。両者の概念は私はまだしっかり意識したことがなく、非常に勉強になりました。
Treatment burdenとは、患者が健康を維持しようとする際に生じる負担(例.何らかの疾患を診断されることによる負い目や行動制限、受診や治療などによる負担など)が日常生活やWell-beingに与える影響のことを言います。「診断すれば治療方針が決定され、良い方向に進む」という暗黙の了解のようなものが当てはまらない場合もあるという考え方や、逆に診断というラベルを付けることにより患者さんが不利益を被る可能性があるという考え方に感銘を受けました。
ここで、Well-beingとは、「良く過ごせていること」であり医療のゴールそのもであるということでした。Well-beingに関しては様々な考え方がありますが、「患者さんが自分にとって重要なことを行える」ことが大事であり、その確認のために患者中心の医療の考え方を用いることの重要性について学びました。
そして、MUSとの向き合い方として、患者さんの抱える難しい状態を「治す」ことから「対処する・付き合っていく」ことへの意識の変換が大事であること。そのためには患者さんの病の意味を一緒に考えるようなNarrative approachが重要で、共感的な対応や継続的なケアを行なっていくことで患者さんがその病や悩みに意味を見出せるようにしていくことが重要と学びました。
またしっかり今回の学びを反芻し、実臨床に活かしていきたいと思います。
末文ではありますが、加藤 光樹先生、貴重なご講義をいただきまして誠にありがとうございました。
回の専攻医向けレクチャーは、2022年9月29日 江口智子先生(南由布クリニック)より、「医療における不確実性」をテーマにご講義いただく予定です。
文責:堀之内 泰雄 拝