2024年度 第5回専攻医勉強会の開催報告

10月24日に第5回専攻医勉強会が開催されました。今回は「論文の読み方」について、大分大学医学部附属病院 堀之内 登先生からご講義を賜りました。

専攻医向けということで、事前予習なしで、初学者向けの参考書を一緒に読み進めていく形式でのレクチャーでした。前回8月にアブストラクトの読み方について学習し、今回はイントロダクションの読み方について学習しました。

論文の研究目的は、「記述研究」「リスク因子研究」「治療・介入の研究」「診断・予測の研究」の4つに大別され、それぞれで大まかな論文構成のパターンが決まっています。つまり、読もうとしている論文の研究目的がどれにあたるかをわかっていれば、その論文のどこに何が書いてあるか、どこに目を通すべきなのかがわかりやすくなります。イントロダクションは、第一パラグラフで概論(導入)、第二パラグラフで問題提起、第三パラグラフで本題に触れられていることが多く、第三パラグラフ内のキーワードで研究目的が推察できることが多いです(describe,characterizeなどの単語があれば記述研究、risk factorsという単語があればリスク因子の研究、といった具合)。

研究目的がわかれば、イントロダクションの次に記載されるメソッドでの研究デザインのパターンも大まかに予測でき、またその論文を実臨床に活かす際に着目すべきポイントもみえてきます。このように、論文を読む際にはただただ頭から通読するのではなく、どのような手順で、何を意識しながら目を通すかで、論文への取り掛かりやすさや理解度は大きく変わるということを学びました。

職種柄多くの論文を読む必要があるものの、学生時代を含め、その読み方について系統的に教わる機会はなかなかありませんので、このような初学者向けのレクチャーを受けられて、専攻医の面々にとって非常に実りある時間になったと思います。末文ではありますが、堀之内先生、貴重なご講義を賜りまして誠にありがとうございました。

文責  筒井 勇貴

2024年度 第4回専攻医勉強会の開催報告

9月26日に第4回専攻医勉強会が開催され、腹部ヘルニア、尿路結石について、大分健生病院坂本聖香先生からご講義を賜りました。アルゴリズムをわかりやすく提示していただき、必要な検査からコンサルトのタイミングまで、臨床に即した多彩な内容を御講義頂きました。

救急外来でファーストタッチをすることが多い、腹部ヘルニアや尿路結石に関しては重症である場合はその後の治療にあまり関与することがないためこれまで重点的に学習してこなかった疾患でもあることから、今回の勉強会を通して専門的加療を含めて議論を深めることができたのは非常に有意義であると思いました。末筆ではございますが、坂本先生、貴重なご講義、ご指導を賜りありがとうございました。

文責 後藤 亮

2024年度 第3回専攻医勉強会の開催報告

7月18日に第3回専攻医勉強会が開催され、マインドフルネス・セルフコンパッションについて、京都大学大学院医学研究科 健康増進・行動学分野客員研究員の岸本早苗先生からご講義を賜りました。

岸本先生は当科 堀之内 登先生の京都大学大学院に所属していた時にお世話になっていたとのことでその御縁で今回の勉強会が実現しました。マインドフルネスとはストレスマネジメントの一つで自分自身が自分自身の痛みをこころがけてあげることができるようにする方法です。慢性疼痛等に対するストレスフルな体験に対して受容的な関係になることでそのストレスを軽減でき、それに対するランダム化比較試験を先生が実際に行っておりその効果が実証されています。

患者様を向き合い、相手を理解するにはまず医療従事者自身が自分自身を知り、自分の体験を理解することが重要です。さらにその体験自体が昨今急増している医療従事者のバーンアウト予防につながるとされています。同様にセルフコンパッションについても非常に興味深いお話をいただきました。セルフコンパッションとは、友人や心から愛する人と同じように自分自身をケアすることであり、実践により自分の健やかさや幸せのために長期的なスパンで行動できるようになるとされており、心の資産形成と言われています。

今まで困難な症例に対して、患者さんのことに対して様々考えることは多かったのですが、まず自分の抱えているストレスなどの感情を十分気づき、まず自分自身に対して思いやりを持って行動してこそよりよい対応につながっていくと講義で知ることができました。

これらのことは非常に新鮮であり、明日からの診療に大いに活用することができると思いました。ご講義の最後には質問コーナーも設けられ、活発な議論が行われました。末筆ではございますが、岸本先生、貴重なご講義、ご指導を賜りありがとうございました。

文責  後藤 亮

2024年度 第2回専攻医勉強会の開催報告

6月27日に第2回専攻医勉強会が開催され、「2024年に改定となった成人肺炎診療ガイドラインの要点まとめ」について、アルメイダ病院 後藤亮先生からご講義を賜り、一部内容に関しましては大分大学医学部付属病院 宮﨑英士教授からご指導を頂きました。市中肺炎、医療・介護関連肺炎、院内肺炎の3種の肺炎の分類等の基礎的な内容から、それぞれの肺炎での起因菌の比率、抗菌薬選択の方法等の実臨床に即した内容まで多彩な内容を御講義頂きました。

外来や入院等、どのような場合でも遭遇する肺炎という内容に関して、ガイドラインを通して要点をまとめていただき、大変有意義なご講義を賜ることができました。ご講義の最後には、専攻医が日々の診療の中で抱えた疑問に関する回答や、今回の講義に関する補足に関して宮崎教授よりご指導いただき、終始専攻医にとって意義深い勉強会であったように思います。末筆ではございますが、宮崎教授、後藤先生、貴重なご講義、ご指導を賜りありがとうございました。

文責  加納 一頼

2024年度 第1回専攻医勉強会の開催報告

2023年度までは毎月「新家庭医療勉強会」と題して、特に家庭医療医を志す専攻医向けのレクチャーを開催しておりました。今年度からは「専攻医勉強会」に名を変え、当医局に属するすべての専攻医を対象に、専攻医のニーズに合わせた題材でのレクチーとして継続することとなりました。

5月23日に第1回専攻医勉強会が開催され、特に専攻医から要望の多かった「眼科救急疾患」について、津久見市の加納医院 加納俊祐先生にご講義を賜りました。眼窩、眼球の基礎的な解剖に始まり、主訴別の鑑別疾患や、各眼科救急疾患の概論、眼科へ紹介が望ましいタイミングについてご教示いただきました。また、内科医にとってcommonである糖尿病網膜症についても、機序、分類、眼底所見から血糖コントロールの注意点に至るまで、重点的に教えていただきました。

総合診療を志す我々専攻医にとっても関わることの多い眼科疾患ですが、専門性の高い領域であり、初期研修終了後にまとまって学習できる機会がなかなかなく、大変有意義なご講義を賜ることができました。ご講義の最後には、専攻医が日々の診療の中で抱えた疑問について一つ一つ丁寧にご回答いただき、終始専攻医の需要に合わせた勉強会であったように思います。末筆ではございますが、加納先生、貴重なご講義を賜りありがとうございました。

文責  筒井 勇貴

2023年度 第6回新家庭医療勉強会の開催報告

 11月30日に第6回新家庭医療勉強会が開催されました。今回は「困難な患者対応」について、大分大学医学部附属病院 堀之内登 先生からご講義を賜りました。

 臨床に携わっている医師で困難な患者対応に難渋する経験をしたことがない方はいないと思います。今回はそういった状況に対して、理論的に理解し対応する方法をレクチャーしていただきました。

 まず患者対応が困難である場合、その要因は患者要因、医師要因、状況要因の3つに大別されます。「感情的、主訴が多い/あいまい、医療への過度の期待」など、患者要因が主たる要因であることもありますが、それ以外にも「知識/経験不足、自己防衛的、疲労、睡眠不足」などの医師要因、「外来がひっ迫している、周囲がうるさい、言語が通じない」などの環境要因も困難な状況に大きく関わります。従って、患者対応が困難と感じた場合には、目の前の患者様だけではなく、自分自身のスキルや状況のせいではないか、一度状況を客観視することが望ましいです。また、患者要因は簡単に解決されるものではないことが多いため、まずは医師要因と状況要因から改善を図るとよいことを教えていただきました。その上でも患者要因で対応が困難な状況ではタイプ別対応方法があり、その中でも代表的な「怒っている患者様」「身体症状症と思われる患者様」に対して、避けるべき行動と推奨される行動をそれぞれ教わりました。

 医師も人間であり、困難な患者対応の際にはどうしても陰性感情が発生することがあります。陰性感情を持たないようにすることは難しい(というよりほぼ不可能)であるため、陰性感情を抱いたときにそれを自覚し一呼吸入れること、落ち着いてから上司や同僚と共有し、改善点についてディスカッションすることで、その患者様や今後同様のシチュエーションに出会った際に、上手に立ち回ることができるようになります。

 自分自身が陰性感情を抱きやすかったり、緊張して焦ることが多いので、今回の講義内容をしっかり反芻し、今後の診療に役立てていきたいと思います。末筆ではございますが、堀之内先生、貴重なご講義を賜りありがとうございました。

文責  筒井 勇貴

2023年度 第5回新家庭医療勉強会の開催報告

10月26日に第5回新家庭医療勉強会が開催されました。今回は「実践に即したケア移行における情報共有・紹介状作成のコツ」について、ヒカリノ診療所 平山匡史 先生からご講義を賜りました。

ケア移行とは、継続的な加療を要する患者が、保健医療サービスを受ける医療機関や療養の場所を移行し、ケアの提供者が変わることを指します。平山先生は現在診療所で精力的に訪問診療に取り組まれており、プライマリケア医の目線から、(高次)医療機関からプライマリケア医へのケア移行に焦点を当てて講義をしていただきました。ポイントとして、①高次医療機関では入院の時点からケア移行を想定し、退院支援の必要性の検討や連携室への介入を依頼すること、②退院支援カンファレンスを積極的に開催し、退院後に必要な医療・介護面のケアについて入院担当医、コメディカル、患者とその家族、プライマリケア医での情報共有を図ること、③診療情報提供書はタイミング(プライマリケア医の初回外来まで)や内容(処方情報、説明内容、継続を要する処置、ACPの状況etc)が非常に重要であること を教わりました。

高次医療機関での研修の多い専攻医にとって、今後ケア移行に携わる際の注意点について、学びの多い講義をいただきました。私も週一回クリニックでの外来や訪問診療に携わっている人間として意識的にケア移行を行っているつもりではありましたが、今後より一層、患者とその家族に寄り添ったスムーズなケア移行ができるよう精進してまいりたいと思います。末筆ではございますが、平山先生、貴重なご講義を賜りありがとうございました。

文責  筒井 勇貴

2023年度 第4回新家庭医療勉強会の開催報告

9月28日に第4回新家庭医療勉強会が開催されました。今回は「診療所での感染症対応」について、大分大学医学部付属病院大分大学医学部付属病院 平林礼奈先生からご講義を賜りました。

診療所と高次医療機関では、施行できる検査の種類や結果判明までの所要時間、入院設備の有無、外来患者総数などが異なるため、同一の主訴や疾患でも検査・治療におけるアプローチが異なります。さらに感染症においては、微生物学的検査の可否や採用抗菌薬の種類も影響してきます。そのため診療所では、感染症(らしい)患者に対して「確証のないまま」「短時間で」アセスメントや治療選択を行うことが迫られます。そんな中で検査に頼らず診療速度・精度をあげるためのノウハウを、前半はレクチャー形式で、後半は専攻医からの質疑応答形式でご教示いただきました。詳細な病歴聴取、網羅的な身体診察や、原因微生物が特定できないまま加療を開始する際の意識やコツ、出席者の各施設での差異など、実臨床に沿った内容を学習させていただきました。

カリキュラム上、専攻医はこれまでは高次医療機関での研修が多く、外勤先や将来勤務する診療所診療のために、非常に有意義な学びを得ることができました。平林先生、貴重なご講義を賜りまして、ありがとうございました。

文責  筒井 勇貴

2023年度 第3回新家庭医療勉強会の開催報告

第3回新家庭医療勉強会が、8月24日に開催されました。今回は「仕事術・生涯学習のコツ」という、これまでとは少し毛色の違う題材について、大分三愛メディカルセンター 堤大輔先生からご講義を賜りました。

昨今需要の高まっているプライマリケア医は、診療する症状・疾患が多岐に渡るため、限られた時間の中で幅広い知識をインプットし、かつアウトプットする必要があります。その中で出会う頻度の少ない症状・疾患を診療する際に、都度調べものをしていては時間が足りません。そのための一例として、第2の脳としてのノートアプリを活用した勉強・仕事術を教えていただきました。また、診断・治療に使われるスコアリング・計算式や最新の医学情報をスムーズに入手できるアプリやHP、電子カルテ上のセットオーダーなど、実際に堤先生が診療に活用されているノウハウをたっぷりご教示いただきました。実際に行き当たりばったりの調べものをしながら日常診療に追われ、プライベートや勉強時間を失いがちだった私にとっては、すべて明日から実行したいと思わされる魅力的な内容でした。

ただし、上記はあくまでも一例で、勉強のしかたや診療方法は人それぞれに適したやり方があることも併せて教えていただきました。デバイスにあふれた時代で専攻医ができていることに感謝しつつ、今後も自分に合った勉強方法を模索していこうと思います。学ぶべきことの専攻医にとって、非常に有意義なレクチャーでした。末文ではありますが、堤大輔先生、貴重なご講義を賜りまして、ありがとうございました。

文責  筒井 勇貴

2023年度 第1-2回新家庭医療勉強会の開催報告

今年度も、新家庭医療専攻医向けの勉強会が開催されました。今年度の第1回として、「EBMの実践」について、5月25日に大分大学医学部附属病院 堀之内 登先生からご講義を賜りました。

昨年度も堀之内先生から、PICOによる問題提起から始まるEBMの5つのSTEPをレクチャーしていただきましたが、今回はその中のSTEP3「情報の批判的吟味」に焦点を当て、より実践的なEBMについて学ぶことができました。

 批判的吟味とは、参考にした研究論文の手法が正しかったかどうか(=内的妥当性)の評価を指します。一方、その研究結果が目の前の症例、あるいは一般的な臨床の場にあてはめられるかどうか(=外的妥当性)の評価はSTEP4にあたります。

 内的妥当性を検討するためには当該論文の隅から隅まで熟読しなければならないように考えてしまいがちですが、いくつかの有名な簡略化されたチェックシートが研究様式ごとにあることと、その実例をいくつかご紹介いただきました。

 EBMの5つのSTEPを実用するにあたり、初学者が最も難しく感じる批判的吟味のノウハウを教わり、専攻医にとっては非常に有意義なレクチャーだったと思います。堀之内先生、貴重なご講義を賜りまして、ありがとうございました。

 続けて7月27日に第2回が開催され、国立病院機構東京医療センター 林 智史先生から「ユマニチュード」についてご講義を賜りました。

 ユマニチュードとは、言語と非言語を組み合わせたマルチモーダルコミュニケーションによるケア技法で、特に認知症ケアにおいて有用と考えられています。フランス語で「人間らしさを取り戻す」というフランス語の造語が由来してます。

 これも5つのSTEPで構成されており、「出会いの準備」「ケアの準備」「知覚の連結」「感情の固定」「再開の約束」の順に進みます。これまで漠然と行っていた認知症の方との対話に、理論と技術があるということは大きな驚きでした。その中で重要視されるコミュニケーションに「見る」「話す」「触れる」「立つ」があり、それぞれの具体的な実践方法をレクチャーしていただきました。特に「立つ」においては他3つに比べて臨床の現場で実践されている割合が少ないように感じられますが、人間の尊厳が立つことで保たれるということ、可能な限りの自立性を持たせ、不必要なサポートをしない方がよいことなどを学び、これからの医療にぜひ活用していきたいと考えさせられました。

新家庭医療専攻医のみなさんは少なからず意識的に取り組んでいる分野でもあり、質問や議論も活発に行われました。末文ではありますが、林 智史先生、貴重なご講義をいただきまして誠にありがとうございました。

文責  筒井 勇貴

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